なかなか取れない痛みと自律神経失調症
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なかなか取れない痛みと自律神経失調症
うつや自律神経失調症では、脳や体に酸素が足りなくなっています。
息が浅くなり、血流が悪くなるため体の各部に酸素が届かなくなるのです。
酸素が届かなくなると、二つの原因で痛みが起こります。
一つ目は、部分的な酸素不足による痛み。
二つ目は、大脳皮質が酸素不足になる痛み。
ではそれぞれをお伝えしていきます。
部分的な酸素不足による痛み
実は痛覚神経は酸素不足に敏感です。
詳しくは話が長くなるため割愛しますが、酸素が不足すると細胞膜にあるナトリウム・カリウムポンプが動きにくくなり神経が過敏になります。これを「静止膜電位が上がる」という言い方もします。
これが痛覚神経で起きると痛覚が過敏になり、血流障害以外に何も問題がないのに痛みを感じます。
正座をしていると下肢が痛くなってきますが、これは膝を屈曲し体重をかけることで膝窩動脈が圧迫され物理的に血流障害が起こり酸素不足が生じるからです。
正座をして数分~十数分すると酸素不足のためしびれが生じてきます。
しびれは痛覚神経の小さな発火ですので、既に痛覚神経が過敏になりつつある状態です。
そしてそのまま正座を続けると痛みに変わっていきます。
この状態は完全に酸素不足の状態で、何もしていなくても痛覚神経が脳に信号を送り続けます。
また、小さな刺激でも過敏に反応するため、指でちょっと下肢を押しただけでも痛みが増します。
自律神経が乱れている場合、交感神経が過剰に亢進しているため血管が細くなり血流障害が生じます。それが激しい場所で痛みが発生するという仕組みです。
そのため、温めたりすると血流が改善し痛みが緩和します。
ちなみに正座を続けていると痛みを感じなくなりますが、これは酸素不足が重度になり痛覚神経の機能が麻痺している状態です。
膝を伸ばすと痛覚神経が過敏状態に戻り痛みが現れ、時間が経ち酸素が足りてくると痛みが消えて正常になります。
施術後に痛みが出てくる方がおられますが、施術前は痛覚神経が重度の酸素不足で痛みさえ感じられない状態になっているのです。
施術で血流が改善すると痛みが現れるということになります。
患者さんにはこの旨を説明しておかないと、施術後に痛くなった(悪くされた)と思われてしまいます。
「好転反応」という説明だけでは納得されない方もいるでしょうから、このような神経学的な説明をする必要があると私は思っています。
大脳皮質が酸素不足になることでの痛み
実は大脳皮質からは「下降性疼痛抑制」というシステムで体の各部の痛みを抑制しております。
皮質(特に前頭葉)⇒中脳水道周囲灰白質⇒延髄部の縫線核(セロトニン)と青斑核(アドレナリン)⇒脊髄後角という流れで、この脊髄後角に入力される痛覚刺激を抑制します。
ちなみに、三環系の抗うつ剤やSSRI・SNRIには鎮痛作用もありますが、それはこの経路に作用するからです。
このシステムの機能が低下すると、無用な痛覚が脳に伝わることで痛みという症状になるのですが、多くの場合は皮質の機能が低下することで起こります。
皮質は辺縁系や脳幹等も酸素の消費量が多いため、酸素不足に非常に敏感です。
そのため…
- 呼吸が浅くなる
- 交感神経が過剰に働き体での酸素の消費量が多くなる
- 何らかの血流障害で皮質に酸素が行きにくくなる
このようなことが起きると皮質の機能が低下し痛覚が抑制できなくなるのです。
対策は酸素
この二つの原因ともに酸素が重要になってきます。
そのため、対策は二つ。
- 酸素をたくさん取り入れること
- 無駄なエネルギーは使わないこと
そもそも呼吸が浅いと脳や体の酸素量が足りなくなります。
酸素をたくさん取り入れるためは、深い呼吸ができる必要がありますが、呼吸筋が緊張していると深く呼吸ができません。
このような患者さんには、呼吸筋の調整や肋椎関節の動きの改善、人によっては肝臓や胃の調整なども必要になります。
また、血液循環も滞りなく流れなければ体の各部に酸素が届きません。
そのため、その方の体力に合った軽めの運動も大切です。
またエネルギーの素は酸素ですので、無駄なエネルギーを使わないように工夫をすることも重要です。
肩や首などの無駄な筋肉の緊張をとる、無駄な考え事をやめる、休むときには横になり安楽な姿勢になるなど、なるべくエネルギーを使わないことが重要です。
多くの患者さんはエネルギーが少ない状態ですので、エネルギーはできるだけ施術やリハビリの反応に使いたいところですよね。
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